放射線ホルミシス療法が体にいい! 江川芳信

医学博士 上野紘郁 ロングインタビュー

参考資料:日本機能性イオン協会理事 江川芳信 著

日本機能性イオン協会理事 江川芳信放射線ホルミシスが体にいい!

中国 陽江の人たちは、日本人の3倍弱の自然放射線を受けていた

「ホルミシス効果の取材でしたね。私は医師ですから、微量放射線の医学的なメリットをお話すればいいでしょうね。分かりやすい話からしましょう」こう切り出した先生の話は、「中国の広東省の例でした。中国の広東省に、陽江という地域があります。この地域には384の村があるといいますが、中国政府の湖南省労働衛生研究所は、この地域は肺ガンの死亡率と胃ガンの発生率が非常に低いことを報告しています。中国全土を100とした場合、肺ガンの死亡率は73%、胃ガンの発生率はなんと48%の低さにとどまっているのです。」他の地域と比較すると、自然の放射線量が約3倍あるのです。その数字は、年間約5.4ミリシーベルトとなっています。この地域に自然の放射線量が高い理由は、地層にあります。この地域の地層には花崗岩が多く、花崗岩にはウランやトリウムといった放射線を発する鉱物が多く含まれているからです。その結果、ほかの地域と比べ、この地域の地表付近の土壌にはウランが約4倍、トリウムが 約6倍強、ラジウムが約6倍も含まれていることが突き止められています。この384の村に生活する人々は、いつもこうした微量放射線を受けているわけです。しかし、意外にも、この地域の井戸水にはラドン量が少ないことも分かっています。つまり、地表に近い部分からラドンが発生し、村人たちは、いつも濃いラドンガスを吸って生活していることになります。さらに、田や畑で作物をつくれば、作物のなかには、土壌から放射性物質が取り込まれます。この地域の人々はそうした作物を食べているわけですから、収穫した作物から微量の放射性物質を摂ることにもなります。「ガンの発症が少ないということは、それだけ免疫力が強いことを意味します。免疫力は、私たちに備わっている健康を守る力、生命を維持する力です。この力が弱くなると健康を害し、病気をすることになります。だから免疫力を上げることは、ガン治療だけでなく、日常の健康の維持にも非常に大切なことなのです。微量放射線にはそうした大きな効果が期待できるということです。

高純度のラジウム鉱石(中国広東省陽江)

高純度のラジウム鉱石(中国広東省陽江)

世界中の学者が注目している中国広東省陽江

世界中の学者が注目している中国広東省陽江

ガンの発生率が少ない中国の広東省陽江の村は自然放射線の高い地域だった

いま、陽江の村人たちは、年間5.4ミリシーベルトの自然放射線を受けているといいました。では、日本に住む私たちは、どれくらいの自然放射線を受けているのでしょうか。「日本の自然放射線は、ほぼ2ミリシーベルトとされています。説によって多少の誤差はありますが、その内訳はだいたい次のようにいわれています」

こういいながら、上野先生は次のような数字を教えてくれました。

宇宙線
0.38ミリシーベルト/年
食物
0.24ミリシーベルト/年
地中
0.46ミリシーベルト/年
空気中(呼吸)
1.00ミリシーベルト/年

「私たちが受ける放射線は、自然放射線だけではありません。自然放射線以外にも、仕事の環境、それに電気製品や医療などから受ける放射線があります。それを人工放射線といいます」

テレビ
0.002ミリシーベルト/年
航空機乗務員(東京~ニューヨーク)
10ミリシーベルト/年
胸部レントゲン写真
0.05ミリシーベルト/回
胸部X線CT検査
6.9ミリシーベルト/回
胃のX線検査
0.6ミリシーベルト/回
歯のX線検査
3ミリシーベルト/回
放射線治療
5,000~30,000ミリシーベルト/回

先生が教えてくれた人工放射線の数値はこういったものです。私たち日本に住む者が受けている自然放射線は、約2ミリシーベルトです。この数字は、中国の多くの地域でもそう変わりはないはずです。

「陽江の村人たちは、その3倍弱の自然放射線を受けています。それでいながら、いえ、“そうだからこそ”といったほうがいいかもしれませんが、中国全土を100とした場合、肺ガンの死亡率は73%、胃ガンの発生率はなんと48%の低さにとどまっているのです。これは注目に値する重要なデータですよ」

先生の言葉通り、この例を見れば、微量の放射線は人体に害を及ぼさないばかりか、大きな”健康効果”が得られることに気づかされます。ここでは肺ガンと胃ガンの2つのデータしかありませんが、このデータが持つ意味には大きいものがあります。日本では、肺ガンと胃ガンの発症数が多い現実があります。その現実を見るとき、微量放射線がこのガン予防と治癒に果たしてくれる効果に、大きな期待を抱かずにはいられません。

微量放射線は、“免疫の司令塔”であるヘルパーT細胞を活性化する

「陽江の例にあるように、私はガンへのホルミシス効果に注目しています。ガンに関係するホルミシス効果をお話しましょう」こういって先生が挙げてくれた例は、日本の財団法人・電力中央研究所(以下では“電中研”と略記)と東北大学医学部との共同研究の成果です。ガンの治療では、放射線治療がよく選択されます。たとえば胃ガンでは、コバルト60をほぼ全身に照射し、ガン細胞を殺します。そのときの放射線量は数百ミリシーベルトにもなります。この共同研究では、32人のガン患者さんに対し、こうした従来の放射線治療とは少し異なる放射線治療を併用しています。その治療とは、週に3回、100ミリシーベルト程度の低いレベルの放射線を全身に当てる治療でした。その結果、通常の高いレベルの放射線治療をおこなった場合に比べ、生存率が高まったのです。「その理由として、東北大学の医学部では、低レベルの放射線で免疫力が高まったことが推測されるとしています。私は、放射線がヘルパーT細胞を活性化したと考えていますが、それは東北大学の先駆的な研究があるからです」

”東北大学の先駆者研究”とは東北大学名誉教授の坂本澄彦博士の報告

坂本博士は1970年代から微量放射線の効果に関心を持ち、全身照射による免疫への効果について研究をはじめています。動物実験などを経てから、博士は、ガンの患者さんに了解を取り、低レベルのX線を全身、または上半身に照射する臨床治療をおこなったのです。現在でも、放射線治療はまず高レベル(大量)の放射線です。当時、大量放射線神話が絶対だったことは否定できません。坂本博士の研究は、“常識破り”の研究になります。そして退官に際し、博士はその研究データをまとめたのです。「その報告データによると、微量放射線を照射した100人以上の悪性リンパ腫の患者さんでは、5年生存率が84%になっています。従来の治療法による生存率は50%となっていますから、これは驚異的な数字といえます。この効果の理由として、ヘルパーT細胞の活性化が確認されています。75%の人でヘルパーT細胞が増えているんです」坂本博士が発見したヘルパーT細胞の活性化は、1986年からおこなわれたカリフォルニア大学医学部のマウス実験でも確認されています。ヘルパーT細胞は、“免疫の司令塔”とも呼ばれる免疫の要です。その活性化は、免疫の増強以外のなにものでもありません。先生は免疫を詳しく説明してくれましたが、そのなかから、ごくごく簡単に免疫とヘルパーT細胞の役割を紹介します。免疫を支えるのが免疫細胞と呼ばれるもので、代表がT細胞とB細胞、それにNK(ナチュラルキラー)細胞です。T細胞には、殺し屋細胞のキラーT細胞と免疫の働きすぎを抑えるサプレッサーT細胞、それにここに登場した司令塔のヘルパーT細胞があります。B細胞は、よく知られている“抗体”をつくります。

私たちの体内にウイルスが侵入したり、体内にガン細胞ができたりすると、マクロファージという細胞がそれらをどんどん食べます。その情報がヘルパーT細胞に伝えられるとヘルパーT細胞が活性化し、ヘルパーT細胞はキラーT細胞やNK細胞、B細胞などを増やす指令を出します。こうして私たちの健康は守られるわけです。ヘルパーT細胞は、免疫力を高める中心的役割を果たします。だからこそ“免疫の司令塔”と呼ばれるわけで、微量放射線はそのヘルパーT細胞を活性化してくれるのです。肺ガンや胃ガンを抑えるP53遺伝子も活性化する「ホルミシス効果は、ヘルパーT細胞を活性化します。これは免疫力の増強そのもの、健康効果そのものですね。もうひとつ、微量放射線には大きなホルミシス効果があります。それは、ガン抑制遺伝子を活性化させる効果です」ガン抑制遺伝子とは、文字通り、ガンの発症を抑える遺伝子です。この遺伝子がきちんと働いてくれれば、私たちはガンを発症せずにすみます。この報告は、奈良医大の大西教授の報告です。それは、P53という肺ガンや胃ガンの発生を抑えることで知られている遺伝子の報告でした。この遺伝子は、DNAが傷ついた細胞の分裂を抑えるタンパク質をつくったり、そうした細胞を自殺(アポトーシス)させるタンパク質をつくります。DNAが傷ついた細胞はガン化する可能性の大きい細胞ですから、このことでガンの発生を抑えてくれるわけです。最近になって、このP53遺伝子には第3の働きが確認されています。それは、傷ついたDNAを修復する作用です。P53遺伝子はDNAの傷を修復する酵素をつくり、細胞のガン化も防いでくれるというのです。

大西教授は、微量放射線がこのP53遺伝子を活性化することを確認しています。

これは動物実験の段階ですが、ガンの予防で注目に値する発見といえるでしょう」大西教授はまずマウスを使い、あとでラットを使って実験しています。これらの動物を、微量放射線を全身照射して数時間経過したケースと、なにもしないケースに分け、P53遺伝子を比較しています。比較されたP53遺伝子は、脳、肝臓、脾臓、骨髄、副腎などの細胞内にある遺伝子です。その結果、全身照射したケースのほうが、P53遺伝子は数倍も活性化していることが分かったのです。「微量放射線が、ガン抑制遺伝子であるP53遺伝子を活性化して、肺ガンや胃ガンを抑えてくれる。先に話した広東省の陽江の村でも、肺ガンや胃ガンが少ないデータがありました。日本人にも肺ガンや胃ガンが多い現実がありますから、このホルミシス効果には注目すべきです。生活のなかでこのホルミシス効果をうまく使えれば、ガンの予防にすばらしい成果を生み出すことができるでしょう。」日本では、毎年30万人もがガンで亡くなっています。ガンによる死亡の第1位が肺ガンで約5万人、なお増加傾向をたどっています。胃ガンは減少傾向にあるものの、こちらも約5万人が亡くなっています。ガンでもっとも気をつけるべきことは、予防です。上野先生の指摘どおり、日常生活でホルミシス効果をうまく使ってP53遺伝子を活性化すれば、日本人のガンに大きな変化が生まれることになるでしょう。

糖尿病の発症を抑え、血糖値を改善する効果も確認されている

代替医療による上野先生の主な治療領域は、ガンです。話がどうしてもガンに関連するものになるのは当然ですが、ホルミシス効果にはもっと大きな健康効果があるのです。たとえば、糖尿病です。糖尿病には、インスリンが分泌されないことで起こるⅠ型糖尿病と、インスリンの量が少ないか、効きの悪いことで起こるⅡ型糖尿病があります。日本人の糖尿病の95%はⅡ型糖尿病とされていますが、マウスを使った実験で、糖尿病へのホルミシス効果が確認されているのです。Ⅰ型糖尿病の実験では、生後15週前後で自然に発症する特殊なマウスが使われました。生後12週、13週、14週をすぎた時点で、それぞれ低いレベルの放射線を1回当てます。すると、12週で放射線が当たったマウスで、糖尿病の発症がハッキリ抑えられています。「Ⅱ型糖尿病でも、ホルミシス効果が確認されています。日本人にはこのⅡ型糖尿病が多いのですから、この結果には興味をそそられますね」この実験では、比較的若い年齢で糖尿病を発症するⅡ型糖尿病モデルマウスが使われています。糖尿病になったこのマウスに、約80週間、低いレベルの放射線を連続して当てます。そのことでどんな変化が生まれるかをみようとしたのです。「結果、放射線を当てはじめて約20週をすぎてから、12匹中3匹の尿糖値が改善されたのです。そして、改善されたその状態が長くつづくことも確認されています。そのまま人間に当てはめることは即断すぎるかもしれませんが、人間でも、微量放射線で血糖値が改善されることが期待できるのです」現在、日本では、糖尿病が強く疑われる人が740万人に達し、糖尿病の可能性を否定できない予備軍が880万人いるとされています。微量放射線の糖尿病への効果が臨床研究から確認され、実際の治療に応用されるようになれば、糖尿病患者の方や予備軍600万人への大きな福音になるでしょう。

万病の元凶・活性酸素を抑える酵素を増加させる

上野先生の話は、もっと健康の基本にかかわるところに及びました。たとえば、活性酸素を無害化する作用です。「ホルミシス効果には、活性酸素との関連も報告されています。これは、当時電中研の山岡研究員(現、岡山大学医学部教授)がおこなった実験結果で、岡山大学の森昭胤教授が指導されたものです。それによると、ホルミシス効果で、活性酸素を消すSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の増えることが突き止められています」活性酸素が健康に悪いことは、よく知られるところです。細胞のDNAを傷つけてガンを発症させるほか、細胞膜を酸化させて老化を進行させたり、血液中の物質を酸化させて血液をドロドロにしたり、動脈硬化を起こさせたりします。私たちの病気の90%に活性酸素が関係しているとされ、“万病の元凶”といわれているほどです。といっても、活性酸素はそうした“悪の顔”を持つだけではありません。実は細菌やウイルスを殺す兵器としても使われ、有用な顔も持っているのです。

活性酸素が危険になるのは、大量に発生した場合です。しかし、私たちの身体には、活性酸素が大量に発生した場合に備えた守りがあります。その守りが、SODやグルタチオンペルオキシダーゼ、それにカタラーゼといった抗酸化酵素です。これらの抗酸化酵素は、余分の活性酸素を無害化してくれています。この働きを“抗酸化作用”といいますが、この抗酸化作用がうまくいっていれば、活性酸素が大量に発生してもそれほど問題になりません。問題は、年齢を重ねるにつれて、つくられるSODの量が激減することです。中高年になるとガンをはじめとした生活習慣病が増えてきますが、SODの激減がその大きな原因と考えられているのです。SODの増加を報告した山岡研究員のレポートでは、微量の放射線をラットに当てています。照射後の4時間でSODが明らかに増加し、その後の8週間にわたり、高いSOD濃度が保たれています。「活性酸素は喫煙、ストレス、激しい運動、化学物質、食品添加物などで発生します。また、呼吸で取り入れる酵素の2%も活性酸素に変化します。現代人の生活は、余分な活性酸素を大量に発生させる危険にあふれているわけです。しかも、年を取るにつれて、つくられるSODの量が激減します。そうしたことを考えると、微量放射線がSODの量を増やしてくれる効果は、非常に頼もしい健康効果といえるでしょう」上野先生のこの言葉に、私たちは深くうなずきました。そうした私たちの反応を見るように、上野先生は言葉を継ぎます。「抗酸化酵素に関する報告が、もうひとつあります。東京大学先端科学研究所所長の二木教授の報告です。二木教授は、長年、グルタチオンペルオキシダーゼの研究にたずさわっておられ、その報告は、SODとグルタチオンペルオキシダーゼについてです」二木教授は、助手の高橋博士と電中研の山岡研究員とともに、200ミリシーベルトのX線をラットに当てる実験をしています。その結果、照射前に比べると、SODとグルタチオンペルオキシダーゼが1.5倍に増加することが確認されたのです。かねがね二木教授は、「SODとグルタチオンペルオキシダーゼの2つが並行して働いて初めて、活性酸素の酸化による弊害が抑えられる」と主張していたといいます。二木教授のこの説について、私たちは語る資格を持ちません。しかし、微量放射線が2つの抗酸化酵素を増やしたという事実は、まぎれもない事実です。ホルミシス効果でSODとグルタチオンペルオキシダーゼが増えれば、私たちの抗酸化力はぐんとアップします。そこから大きな健康効果が導き出されることは疑いようもなく、これも大きな放射線ホルミシス効果といえるでしょう。

細胞膜を若返らせ、アンチエイジング効果も期待できる

知るにつれ、ホルミシス効果は輝きを増すばかりです。日常生活にこのホルミシス効果を取り入れることができれば、大きな健康効果になります。そんな私たちの心中を見透かしたように、上野先生はさらに効果を披露してくれます。「次の話は、いまの抗酸化作用とも関係しますが、細胞の若返りの証明です。これは動脈硬化の予防効果にもなり、女性に興味のあるアンチエイジング効果も期待されます」この本の読者には、女性もかなりおられると思います。女性にとって、アンチエイジング効果は手に入れたいものでしょう。“細胞の若返り効果”も、岡山大学と山岡研究員の共同研究で確認された効果です。共同研究ではラットが使われ、脳、肝臓、脾臓などの細胞膜の過酸化脂質の量が測定されています。その結果、膜の酸化で変質したものが明らかに改善され、細胞膜の若返りが立証されたのです。細胞膜を酸化するものが、先に出た活性酸素です。活性酸素が細胞膜を攻撃すると、膜に含まれる脂質が酸化されて過酸化脂質というものに変わります。過酸化脂質は“第2の活性酸素”とも呼ばれ、次々に細胞膜の脂質を過酸化脂質に変えていきます。こうなると、細胞膜の役割が十分果たせなくなります。酸素や栄養は細胞膜を通じて内に取り込まれ、不要物は細胞膜を通して外に出されます。細胞膜が酸化されるとこの交換がスムーズにいかなくなり、細胞の活動は低下します。それが、”細胞の老化”ということなのです。「細胞膜の老化を防ぐ効果、あるいは細胞膜を若返らせる効果は、先の報告にもあったSODなどの抗酸化酵素の増加によると考えられます。増えた抗酸化酵素が余分な活性酸素を消し、活性酸素の攻撃から細胞膜を守るばかりか、細胞膜を若返らせてくれるというわけなのです」「細胞の若返りは、アンチエイジング効果以外にいろいろな効果が期待されます。たとえば、リウマチ性関節炎、糖尿病、C型肝炎、筋萎縮症、アルツハイマー、パーキンソン、アトピー性皮膚炎をはじめとする各種アレルギー、腎障害、高血圧、膠原病といった難病への効果です。これらの病気は、ある部分の細胞が活性酸素によって死滅したり、その周囲の多くの細胞が機能を失ったりすることで進行していくからです」細胞膜が若返ると、膜を通してのいろいろな物質のやり取りが回復します。上野先生が指摘するように、そこから脳細胞や内臓の細胞、血管の細胞などが機能を回復し、難病の軽快や治癒などが期待されるのです。アンチエイジング効果の取材まででゆうに2時間がすぎ、もう予定の時間を経過しています。「そろそろ切り上げないと」と思っていると、入口のほうから「こんにちは」という声が聞こえます。どうやら患者さんが見えたようでした。「いろいろありがとうございました」腰を浮かそうとすると、上野先生からこんな言葉がかかったのです。「日本人には、“放射線は怖いもの”という放射線アレルギーが強くあります。悲惨な被ばく体験もありますし、第五福竜丸の経験もあります。チェルノブイリの悲劇も知っています。そうした経験から放射線へのアレルギーも理解できますが、微量放射線の持つ健康への効果には、もっと目を向けて欲しいものです。今後、さまざまな疾患についての効果も確認・報告されるでしょうし、医療に果たす大きな役割も期待されます。そうしたメディカル・ケア(医療的なケア)と同時に、ヘルス・ケア(日常の健康へのケア)での応用にも期待しています。